煎りたて、挽きたて、淹れたての「三たて」コーヒー。家では必ず手焙煎のコーヒーを淹れているという純さんに、家庭でできる美味しいコーヒーの淹れ方をお聞きしました。
はじめに
コーヒーの美味しさの決め手は、なんといっても鮮度です。『コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか』の中ではこう綴られています。
コーヒーは、「焙煎したてがよい」、「粉は挽きたてがよい」と言われるがこれはいずれも、時間をおくと、豆や粉が酸化し、味に影響を及ぼすからである。
旦部 幸博(2016)コーヒーの科学「おいしさ」はどこで生まれるのか 講談社 pp.153より引用
コーヒー豆は焙煎後に酸化と油の変質が始まります。また粉にすると酸化は完全に進みます。よって焙煎後すぐ使う、挽いたらすぐ使うことが重要ですが、実際のコーヒー流通では、焙煎後時間が経っていたり、利便性から粉で売られているのが実情です。
こういった商業的事情に左右される前の、コーヒー本来の飲み方を以下にご紹介します。
この方法で淹れたコーヒーを三度試せば、きっとあなたも、他のコーヒーでは満足できなくなるはずです。
準備するもの
- コーヒー生豆
- ガスコンロ(または強力カセットコンロ)
- 電気ケトル(お湯を沸かせるもの)
- 焙煎機
- ざるやキッチンペーパー(チャフを拭き取るもの)
- コーヒーミル
- ペーパーフィルター
- ドリッパー
- サーバー
- 細口ドリップポット
- コーヒーカップ&ソーサー
家庭で焙煎する際は、IHではなく、ガスコンロが必要です。ない場合は3000kcal以上のカセットコンロを用意するといいでしょう。
1. 焙煎加減はお好みで
私は焙煎するときにはいつも、発明工房の手煎り焙煎機「煎り上手」を使っています。
一度に4~5人分の焙煎ができ、誰でも簡単にムラなく焙煎することができるのでオススメです。(ゴマ煎り器などは失敗が多いという情報もあります)
こちらに抽出量に応じた分量の生豆※を入れて、焙煎機を軽く左右に振りながら豆を煎っていきます。振るのは豆を回転させ、むらなく煎りあがるようにするためです。
手焙煎ですから、「浅煎り」「中煎り」「深煎り」と好みに合わせて煎り加減を調整することができます。浅煎りだと酸味が際立ち、深く煎るほど苦味が強くなっていきます。
浅煎りコーヒーはお店ではなかなか飲めません。浅煎りが楽しめるのも、手焙煎ならではです。
中煎りだと煎り時間は4分ほどです。しばらく煎ると、シルバースキンと呼ばれる豆の薄い種皮部分が、チャフと呼ばれる燃えかすになって出てきます。
このチャフは雑味の要因となるので、コーヒーミルに移す前に、ざるやキッチンペーパーを使って取り除きます。
煎りや豆の産地による味の違いに関しては、こちらの本が図入りで見やすくおすすめです。
※一人分120ccで→1人分=15g、2人分=26g、3人分=33g、4人分=42g、5人分=50g
2. 挽きたての香りを楽しむ
焙煎が終わったコーヒー豆はすぐに、コーヒーミルを使って丁寧に挽いていきましょう。
豆を挽いている時が、焙煎した豆が砕かれ中のガスが放出されるため、コーヒーの香りを最も楽しむことのできる時間です。
ムラがないよう、丁寧に挽きながら、香りを存分に楽しみましょう。
3. ドリップにひと工夫あり
挽いたコーヒーの粉をフィルターをセットしたドリッパーの上に敷いて軽くならします。
90℃前後のお湯を、粉をへこませないように粉の上に乗せるような感覚で注ぎます。(一回沸騰させたお湯を、別の容器に移すと大体90℃になります。)
お湯を注ぐ時は、フィルター自体を濡らさないように注意します。粉の上をお湯が覆ったら30秒待ちます。
30秒後、この時に抽出されたコーヒーには苦味と雑味があるので、すべて別のカップに移しておきます。この液体はコーヒーのクセですが、クセはしばしば味わいのアクセントにもなります。もし抽出されたコーヒーを飲んで物足りなければ、移しておいたこの液体を少し(5~10cc程度)混ぜるといいでしょう。
コーヒーサーバーの上にドリッパーを戻して、コーヒーの粉の外壁を崩さないように円周の1/3くらいの大きさの円を描くように、ゆっくりとなるべく細口で、ドリッパー内の液が出きってしまうことがないようにお湯を入れ続けます。
お湯を注ぐスピードは、コーヒーが抽出されるスピードに合わせます。出入り(inとout)を合わせることを意識すると失敗が少ないです。
HARIO V60シリーズのドリッパーは、お湯を注ぐスピードの出入りを合わせやすく、ドリップの時間も短くて済むのでオススメします。
豆の量に応じた抽出量(例.生豆を 33g使ったら3人分360cc)に到達したら完成です。ドリッパー内に少し液体がある状態で取り外すのがコツです。最後まで出し切ると雑味がはいってしまいます。
淹れたてをお楽しみください。なお、このコーヒーは冷めてもおいしくいただけます。
より楽しむために
慣れてきたら煎り加減、水の量など変えて、味の違いを楽しんでみてください。
またコーヒーは一緒に食べるもので味が変わります。例えばチョコレートなど甘いものを食べた後に飲むと、味が全く変わります。半分はそのまま、その後に甘いものを食べて飲むと、よりコーヒーの味わいを楽しめます。
ドリップ後に残ったコーヒーは粉が乾くまでの間、消臭剤として使えます。別の容器に移してトイレに置いておくと効果がありますよ。
生の豆を準備できない場合でも、市販の焙煎豆を焙煎器で再度煎ることで表面の変質した油や酸化した組織が除去でき、煎りたてに近いすっきりしたコーヒーにできます。(ただし、煎り具合が市販時よりより深くなり苦みは増しますのでご注意ください。)
終わりに
以上に示したのは一つの方法です。コーヒーに関連した情報には様々なものがありますが、大事なのは、情報を鵜呑みにせずなんでも自分で試してみることです。
この記事を読んだ方には、冒頭にあげた「コーヒーの科学」に示されるような科学的根拠に基づいて、自分の頭で考えて、自分に合った淹れ方を見つけていって欲しいと思います。
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コーヒー通の純さんのお話を聞きながら、コーヒーについて語る時間もまた格別です。是非純さんの出張コーヒーのサービスを受けてみてはいかがでしょうか?
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