“子連れ着付け師”として仕事を続けるあゆみさん。
最終回は着付け師の将来について。業界全体を盛り上げるあゆみさんの挑戦とは?
時代と共に移り変わる着付けの世界
あゆみさんが着付けを学ぶ生徒さんによく言われるのが「先生によって教え方が違う。」という声。
あゆみさん自身も着付けを習った時にそう感じたそうです。
着付けにこの順序じゃないとダメという絶対のルールは決まっていません。先生によって違うので色んな先生の良いところを真似すればいいと思います。あと今は着付けに使える便利グッズがいっぱいあるんですよね。普通は紐を使うところをプラスチック製のもので挟んだりとか、否定派も結構いるんですけど私は自由に使えばいいと思っています。
例えば成人式の華やかな帯。昔は紐だけだったのもが今は3重になっているゴムの紐に引っ掛けながら帯が作れます。
他にもTシャツ型の長襦袢など昔は考えられなかったアイデアが、今となっては楽で、綺麗にできるということで使われることも多いと言います。
着付け師の中にはそのような便利グッズを使うことを邪道だと言う方もいるそうですが、あゆみさんは肯定的です。
着物も洋服と同じで季節によって着るものが変わるんですけど7,8月は夏物、6,9月は中間で、それ以外は冬物で全部同じなんですよ。でも5月とか9月ってまだ暑いじゃないですか。だから暑い時期に「袷(あわせ)」っていう裏地がある着物を着るのはどうなんだろうっていう人もいれば、いやいや昔からの伝統だからという人もいて…私は好きな方選べばいいんじゃないかと思うんです。
着付けの風習、実は戦後にできたもの
着物の”伝統”とは言えども、今の着付けの風習は戦後に確立したそうです。
一説によると、戦後呉服屋さんがこういう時は訪問着、こういう時は付け下げ、小紋とか、着物をたくさん売るために細かく分けたという話が一般的なんですけど、それだけに踊らされるのもなあと。着物を当たり前に着ていた時代には「着物はこうじゃなきゃ!」みたいなものって絶対ないと思うんですよね。
自由に着物を着ることは、着物を当たり前に着ていた時代の「原点」に帰っているのかもしれません。
着付け師にビジネス感覚を
出張着付けの他、あゆみさんは月に一度着付け師向けに講師を呼んで、経営についての勉強会や着付け師の交流会を開いています。
着付け師という狭い世界で働く人々の、お金に対する苦手意識を変えたいとあゆみさんは語ります。
着付け師さんの中で「稼ごう!」っていう人ってあんまりいないんですよね。でも着付け師の方ってきめ細かいし、サービス精神旺盛で仕事のできる方が多いんです。だけどお金の話になると私はいいのよって拒絶反応を示す人も多くて。そのあたりもう少し勉強して一緒に頑張っていこうよと、着付け師全体を盛り上げられたらと思います。
子連れ着付け師、勉強会と新しいことに挑戦し続けるあゆみさん。
伝統と革新の絶妙な融合の先に、着付けの未来が待っているのかもしれません。