今や、スマホを使えば写真は綺麗に撮れる時代。ではプロのカメラマンと素人では何が違うのでしょうか?
本日は、出張撮影専門の女性フォトグラファー「しいれい」さんにお越し頂き、一味違う写真の撮り方を教えて頂きました。今回は、ANYTIMESメディア顧問の佐々木俊尚氏とのインタビュー対談記事です。
ダイビングに魅了され、撮影の世界へ
ー大学卒業後は何をされていたのですか?
大学卒業後は、ワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。そこで現地の日本語教師のアシスタントを1年程していました。その後、帰国し一旦は外資系で働いたのですが、海外やダイビングが忘れられず正社員を辞めました。そしてタイのタオ島に行って、ダイビングのプロ資格を取得しました。その時に「水中ビデオグラファー」という仕事を初めて知ったのです。
ーなるほど。タイビングがきっかけで撮影の世界に?
そうなんです。当時は写真ではなく、動画の世界を目指していたんです。タオ島ではタイビング毎にツーリストを密着撮影をする水中ビデオグラファーの同行サービスがありました。
具体的にはどんな仕事かと言いますと、日中そのツーリストに付き添って撮影し、夕方までに編集、夕食時にその映像を上映して、希望者にはDVDを販売するサービスです。旅が終わってもリアルに臨場感が思い出せるサービスで素敵なんですが、生涯の仕事としてやっていくにはリスクがありました。
ー安定していたわけではなかったのですね。その後はどんな風に?
はい。その後はまた日本に帰ってきて、ブライダルムービーなどの会社に入り動画の勉強をしました。もっと水中動画を深く理解したかったので、休みの度に海外へ行き、水中撮影の作品撮りを続けていました。
でもその最中に水中事故に遭ってしまい、ダイビングがドクターストップになってしまったんです。
ーそれは大変でしたね。それ以降、水中撮影はどうされたのですか?
その後遺症で手の筋力が弱くなり、それから重たい機材を持つ事が難しくなってしまったのです。特にビデオ撮影は機材を長時間ホールドしていないといけなかったので。そこからスチール写真に転身したんです。
ーそれで動画からスチール、つまり静止画の写真の世界に移ったのですね。写真の仕事はまだやった事がなかったのですか?
はい、やった事がなかったので、また1からでした。でも今振り返るとスチールに移って良かったと思ってます。
しいれい流の写真の撮り方とは?
ーでもスチール写真の業界は、雑誌が衰退したことなどで、フォトグラファーの仕事が減っていると聞きますし、人材が余って飽和状態になっているということはありませんか?
飽和状態ですね。雑誌などの業界から流れてくる方や、最近ではビギナーの方々がスタジオを持たない「出張撮影カメラマン」を撮影業のスタートとして参入するケースが多いです。
ーそういう状況の中で、自分の「売り」を作っているのですか?
はい。例えば七五三です。特に私に要望が多いのが、メイクや髪結い・着付けなどのお支度シーン、ここは普通のカメラマンで撮る人は少ないので。特におじいちゃん・おばあちゃんと会話をしている所を撮影すると喜ばれますね。私自身もポーズが決まった写真だけじゃなくて、そういった何気ない写真が魅力的とお伝えしています。
<一般的な写真>
<しいれい流の写真①>
<しいれい流の写真②>
ー確かに。こういった動きがあって、完成された記念写真じゃない「途中経過」って、意外に見ないですよね。
将来、見返した時にこんな会話をしたね!と思い出して欲しいんです。
ー写真を撮る上で、特に大事にしていることはありますか?
一番見ている所は、感情の動きですね。後から写真を見て、写真から家族の声やにおいや、その空気感などがリアルに思い出される。そういうドキュメンタリー性やストーリー性を大事にしています。
ーそれは動画撮影のスキルが活きているということですか?
まさにそうです。ライブ感を出すのが私の持ち味なんです。一般的にはカメラマンが、「撮りますね!」と声を出して雰囲気を作ったり、もしくは撮影される方の緊張をほぐすと思うんですが、私の場合はひたすら影武者になります。ビデオカメラマンって基本は喋らないじゃないですか?そういう感じです。
ーなるほど、完全に映像の人ですね。映像と写真撮影の方の違いを改めて感じました。これからカメラマンになりたい方にアドバイスはありますか?
そうですね、「カメラマン」「フォトグラファー」と名乗るのは簡単ですが、飽和状態の業界でどう人と違うことをするか。私は、最近ある写真にも大きなニーズがあると感じています。そんな風に自分でニーズを見つけることができるかが大切かと思います。
プロの写真家しいれいさんが語る、プロ写真のニッチな需要とは?