2017年4月10日、三菱地所のレジデンスラウンジにてジャーナリスト・佐々木俊尚氏によるトークイベント「人生100年時代をどう生きる?これからの豊かな暮らし」が開催されました。平均寿命は伸び、人生100年時代とも言われる時代。より豊かに、 そしていつまでもアクティブに、暮らしていくための新しい生き方とは?

心身ともに、身軽に生きる

 皆さんは「ミニマリスト」という言葉をご存知でしょうか?ここ5年くらいでものへの執着がなくなって、身軽に生きましょうという、そういう生き方をする人が増えてきているなと感じています。

 例を一つ挙げると、ここ最近山登りの世界でちょっとした流れになっているのが「ウルトラライト」です。昔は山登りというと片足2kgくらいの登山靴を履いて、巨大なリュックサックを背負って登るというのが一般的でしたが、そんな山の世界にテクノロジーの進化が浸透してきています。軽くて、あったかくて、しかも雨が入り込んでこないような防寒具が出てきたおかげで、気軽に山登りが楽しめるようになりました。

 山に登る方ならわかると思いますが、20kgのテントを背負って歩くのは結構辛いです。これがウルトラライトだと、食事もフリーズドライの乾燥食品と簡易コンロだけ持っていけばいい。最近のコンロはすごくて、お湯が30秒くらいで沸くようなものもあります。そうすると昔装備に20kgかかっていたものが、すごい人だと3〜4kgとかにまとめられてしまう。日帰りで近所の山に登るくらいの荷物で北アルプスを1週間歩けるような、そんな時代になってきているんですね。

 こういった変化は山登りのようなスポーツの世界だけでなく、暮らしの分野でも起きています。家の中にテーブルはなくて、小さな折りたたみのちゃぶ台だけ置いて、そこで仕事もするし、食事も取る。服なんかもジャケットなら5〜6枚しかなくてあとは買いませんとか。そういう人たちが好きでよく会いに行くのですが、物件の写真を見せてもらうと、「これ間取りの写真?」みたいなことが多いです。ものがなさすぎるんで、人が住んでるように見えないんですね(笑)

 ミニマリストという言葉自体アメリカから入ってきたものですが、アメリカでは最近Tiny House(タイニーハウス)と呼ばれる、小さい家に住もうという動きも出てきています。昔からある一人前の大人になったら大きな家を建てて、一国一城の主人になるのがいいとような、そういう流れとは逆に今は向かいつつあるんです。

ミニマリストとして、街に暮らす

 先日、朝日新聞の元記者の稲垣えみ子さんとトークイベントでご一緒しました。ミニマリストである彼女の家には冷蔵庫がありません。話の中で「佐々木さん家には何があるんですか?」と聞かれて「まあでも最低限必要な家財道具はあるので、洗濯機とか冷蔵庫とか」と言ったら「え、冷蔵庫!?そんなもの真っ先になくすべきものNo.1じゃないですか」なんて怒られてしまいました(笑)

 彼女に普段どうしているのかと聞くと、食材の買い置きができないので、近所の八百屋やスーパーで買ってきたものをその日のうちに食べるそうです。毎日買い物に出かけて、1日500円玉一枚でお釣りがくるくらいしかものを買わない。

 その代わり、近所の豆腐屋だったり、クリーニング店だったり、気に入ったお店を見つけては店の人に話しかけて、仲良くするのだそう。こうして近所に顔なじみの店を5軒、10軒と増やしていきます。彼女はそういう自分の周辺に暮らす人たちのことを「チーム稲垣」と呼んでいます。

 これって結局、ミニマリストのようなものを持たない暮らしは、自分の家の中だけでは生活が完結しないということなんですね。街そのものを自分の住処のように考えることがこれから大事になってきます。

 江戸時代には長屋がありました。真ん中に路地があって、周りにコの字型に家が並んでいて、炊事や洗濯は路地の共有スペースで行う。路地が完全に公共空間かというとそうでもなくて、路地から大通りに出る所に付いている木戸を夜になると閉めてしまう。昼間は外につながっているが、夜は家として機能するという、そういう中間地帯がありました。

 こうした緩やかに家の中と外がつながるような、昔からあった「街に暮らす」という考え方に戻ってきてもいいのではないかと思います。

2/2 シェアしてつながる豊かな暮らし

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