24歳の当時、某ホテルの洋食料理のキッチン責任者を担っていた伊藤さん。
そんな伊藤さんに、「フランスで修行をしないか?」という魅力的なスカウト話がありました。
しかし一方で親の事業がうまくいかず、負債を背負うことになりました。
夢のフランスか、親の借金の肩代わりか…伊藤さんの出した結論とは?
18歳から食に関わる
高校卒業後、パン工場で働きだした伊藤さん。メロンパンやお馴染みのソーセージ入りのパンを作っていました。
2年が経ち、「もっと料理全般に詳しくなりたい!」と思った伊藤さんは、20歳の時にホテルのコックに転職をしました。
劣等感の塊から、キッチンの責任者に
当時の職場は、一言で言えば「軍隊」だったそうです。
手や足が出て指導されることが普通。飲食業界の厳しさを痛感した伊藤さん。
そして元々パン工場で働いていたため、包丁を握る経験もありませんでした。
しかも、同期5人の中で、伊藤さんだけ調理師免許を持っていませんでした。
スタートラインが違い、同期のメンバーが着実に出世していく。
その姿を2年間、皿洗いと雑用をしながら見ていきました。
まさに、劣等感の塊だった。と振り返る伊藤さん。
それでも辞めなかった理由は、弟のように面倒を見てくれた先輩がいたからだそうです。
いいか、勤務時間内で勝負するから、コンプレックスを持つんだ。
みんなが休んでいる時間に残って練習する、すべての時間で物事を考えろ。
こう教えてくれる先輩が、居残り練習に付き合ってくれたおかげて、辞めずに続けられたそうです。
そして実力を伸ばしていった伊藤さん、24歳の時についにキッチンの責任者代理まで勤めるようになりました。
究極の2択の末…
仕事も順調だった頃、ついに転機が訪れます。イベントで知り合ったフランスのシェフから、スカウトを受けました。
もっと料理を極めていきたいと思っていた伊藤さん。
しかし同時に親の負債を誰が請け負うか、家族の事情も抱えていました。
フランス修行を選べば兄弟に迷惑をかける。借金の返済を選べば、夢は閉ざされる。
しかも姉は相手先の家庭の事情を抱え、弟は学生。
究極の2択を迫られた伊藤さん…
悩んだ末、自分しかいないと思った伊藤さんは、スカウトを断り、借金返済を決断しました。
しかも毎月の返済金額は、今もらっている給料の2倍…
現状の給与では難しいため、大手通信会社の受付の仕事に転職。そして夜は飲食店のバイトで返済に当たりました。
休みはなく、20代後半の全てを費やしました…
これからは、自分の感情じゃなく、必要としてくれる方のために働きたい
現在、36歳になった伊藤さん。
返済は完了し、現在は防災設備の仕事や放置自転車の回収の仕事など多岐に活動しています。
実は多様な経験や仕事をした結果、様々なジャンルの仕事を引き受けられるようになったそうです。
最後に伊藤さんが今感じることを話して下さいました。
「今の自分はこれといって極めていることがありません。新しいことをやってみたい気持ちも正直ありますが、今まで苦しい時を支えてくれた方や、その時に出会った方で、今自分を必要としてくれる方もいます。だからその人たちの期待に応えられるように仕事をしていきたいです。」
今では「事業を継承してくれないか?我が社の役員になってくれないか?」などたくさんの声を頂いているようです。
20代を苦労された伊藤さん。今では、そこで知り合った方々からありがたいお話ももらっているとのこと。
とても謙虚で控えめですが、壮絶な20代の経験を持った伊藤さんでした。
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