今回の主役は、読み聞かせの活動を続ける岡本なり子さん。
実際におはなし会の現場に行って取材させていただきました。
岡本さんの読み聞かせに懸ける想いを、おはなし会の写真と共にお楽しみください。
全3回の連載記事です。
母が毎晩読み聞かせてくれた『かちかち山』
幼い頃、岡本さんは毎晩母に『かちかち山』を読んでもらっていました。
何度も読んでもらう内に話を覚え、それでも毎晩読んでもらうのが楽しみで、たまに母が間違えると「違う!」と声をあげていたそうです。
岡本さんは、子供に「絵本を読んで欲しい。」と言われたらいつまでも読んであげて欲しいと語ります。
子供って「絵本を読んでくれた人は絶対自分のことを大事に思ってくれてる。」って信じることができるんです。だから字が読めるようになっても「読めるからもう自分で読みなよ。」って言っちゃダメ!「自分で読めるよ。」って子供が自分で言ってから、読ませてあげればいいんです。
幸せな記憶を一緒に作ってあげる
小さい頃に読み聞かせてもらったお気に入りの本は、楽しい時間の記憶と一緒に覚えている。
大きくなってから、思い出の絵本が記憶と共に残っていることは幸せなことだと岡本さんは言います。
読み聞かせてもらった本だけじゃなくて、一緒に過ごした時間とか、状況とか、そういうところまでちゃんと覚えています。一緒に過ごした幸せな記憶っていうのは、必ずその人がしんどい思いをした時にちゃんと励ましてくれる。だから子供には幸せな記憶をいっぱい持っていてもらいたいんです。そのために読み聞かせは有効なんですよね。
別の読み聞かせの先生から、子供の時に『ぐりとぐら』(福音館書店)を読み聞かせてもらった子の、こんなエピソードを聞いたそうです。
大きくなってしんどくなった時、たまたま本屋で『ぐりとぐら』を見つけて開いた瞬間に、読んでくれた訛りのあるお母さんの声とか、自分の住んでた家の風景とか、匂いとか、感触とか、パーって思い出したんですって。それでもうちょっと頑張ってみようって思えたって、すごくいい話ですよね。
ハッピーエンドはなぜ必要か?
子供は絵本の世界と自分の世界に隔てがなく、絵本の中で一番小さくて弱い主人公に自分を投影させて話を聞くのだと言います。
今はお父さんやお母さん、お兄ちゃんお姉ちゃんに勝てない。でも僕も本の中の主人公みたいに頑張ったり、みんなと協力すればいいことあるんじゃないかなぁと、読み聞かせを通して子供は感じることができるんです。
誰にも教えられなくても、本を通して感じることができる。
さらに岡本さんはこう続けます。
「将来きっといいことが待ってると、信じられること。」ってすごくない?それが生きてる励みになるでしょ?だからハッピーエンドのお話をたくさん聞かせてあげてください。子供は根っこに信じるものを持っていた方が絶対良いですよ。だって人は自分のイメージした人になっていきますから。読み聞かせはイメージトレーニングですね。
子供の幸せな記憶作りを手伝ってあげることが、親にできる最大級の愛情表現なのですね。
おはなし会フォトギャラリー1